空は晴れている、朝もやが出てくると風が無ければかなり視界が悪い。そんな中で戦いの音だけ近づいてきたらどれだけ怖い思いをするだろうな。応佐司馬を呼んで小道具を用意させる、準備自体は二時間もあれば出来たので問題はなかった。
明日の朝の分の飯まで一斉に炊かせると、戦仕度がバレてしまうらしいから、小口で炊飯をし続けさせて何とか一食を余分に備えさせた。これまた細かいことだが、気づかれたら上手く行かんくなるし、腹が減っては戦は出来ん。
翌朝未明、陽が上がる前に兵を城の外に出して五キロほど進めて左右に広げて待機をさせる。軽い土木工事を行わせて、北側からの敵襲に有効な防備を転々とさせた。強固なものは要らないんだ、ちょっとした注意を引いてくれたらそれでいい。
早すぎる朝飯、https://www.easycorp.com.hk/en/incorporations 握り飯を一個だけここで食わせておく。あまり腹に入れると動きが悪くなるのと、何より負傷したときに死に直結してしまう。太陽が登って来ると、今度ははっきりと黄巾賊の集まりが居るのが視界に入る、こちらが見えているんだからあちらからも見えているはずだ。見張りがそこまで勤勉かは知らんぞ。
「始まったな」
何か声が聞こえてくると、人が慌てて動き出すのが見えた。あちこちで火の手があがるのも確認された。その場に留まって戦っているのは少しのうちだけ、そのうち陣から何処かへ離れていく奴の姿も見えるようになる。
「霧が出ます!」
濡れた地面が太陽光で熱せられて、地表付近に白いものが発生した。これで腰位までの様子は見えんぞ。姿勢を低くして、簡易土塁――といっても膝位までの高さしかない――の後ろで待機を続ける。 それなりに大きな集団、恐らくは千は居るだろう奴らが近づいてくる、逃げているだけだろうが。あと五百メートルといったあたりまでやってきたところで「立ち上がれ、声をあげろ!」一斉に起きて軍旗を掲げさせた。
「うぉぉぉ!」
突然現れた漢軍に黄巾賊が足を止めて驚く。横に広がり、旗だけ五本、十本と持たせたやつを後ろに配置したものだから、こちらの本隊がいるかのように見えただろう? そも意気地なく逃げてるような奴がこれを突破して行こうと思うかどうか、答えは見えている。下がれず、進めずで東西に割れて走って消えて行った。
統率を失った兵など体を為すものではない、これを促進させる。
「この場は千人長に任せる、半数は俺について来い、敵を全滅させるぞ!」
一旦西へと進んでから北上する、途中で少数の黄巾賊と会うたびにそれを切り捨てながら数キロ進む。混戦になっている張遼と敵の本隊、意外と粘っている奴も居るな。
「本隊もこれより黄巾賊の本陣へ切り込む、続け!」
千人ではさしたる衝撃力は無い、だが今後もいくら現れるかわからないのに平静を保って居られるかは別だ。
「か、官軍の増援だ!」
「囲まれているぞ!」
「逃げるんだ!」
賊が十人、二十人であちこちへ逃げていく。本陣の黄色い大きな旗が倒されるとそれは一層顕著になった。代わりに荊州の旗が掲げられると、黄巾賊は我先にと逃げ出していった。
「敵を掃討しろ!」
勝ち戦だと敵味方に刷り込ませる、もう指揮系統は乱れに乱れて組織的な動きなど出来なくなっているからな。さて俺はこんなことにかまけている場合ではない。「千人長、本隊は東へ進んで典偉と呼応して動くぞ!」
集合の銅鑼を鳴らすも七割ほどしか集まって来ない、それだけで見切りをつけて小走りで東へと向かう。