じゃないと手加減できないだろ、俺は達人じゃないんだぞ。取り巻きの山賊が薄ら笑いを浮かべている、いいさ相手を甘く見て居たら良い。
「島殿のお手並み拝見」
荀彧がにこやかに声をかけて来る。そういえばこいつは俺がこうやって戦うのを見たことないもんな。歩み寄ると視線を絡めて真剣に対峙する。何だか感覚が鋭くなっている気がするな!
「行くぞ!」
臧覇が剣を遠慮なく振り下ろしてきた、https://www.easycorp.com.hk/zh/offshore 当たれば痛いでは済まない。片手で剣の軌道に鞘を交差させてぶつけた。
「そうもったいぶらずに全力でこいよ、野次馬が退屈するだろ」
はやし立てる声があちこちから飛んでくる、娯楽なんだこういうのは。臧覇も解っているらしく、一歩下がると姿勢を低くする。
「死にたがるのは良くないぞ、島」
「自慢じゃないが、まだ俺は一度も死んだことがないんだよ」
今度は両手で持って構えた。死んだうちに入ってないよな今までのは。判定は微妙だ。
鋭い踏み込みで衝いてきた、半身をずらして鞘を切っ先にあてて逸らす。今度は弧を描いて首を狙ってくる、交差をさせて真っ正面から受け止めた。
「守ってばかりでは勝てんぞ」
「決定打の無い攻めも同様だ」
ちょっとしたせめぎ合いは戦士の心をくすぐって来る、俺は今この戦いを楽しんでいる。素早い切り込み、不意に出てくる拳、そして虚実織り交ぜた攻撃。それらを全て防ぎきると、最後に柄で太もものあたりを叩いてやって離れる。
「せっかの楽しい見世物だ、昌稀とやらも一緒に掛かってこい。二人の相手をしてやる」
「舐めやがって!」
「兄貴、やっちまいましょう!」 怒りと苛立ちが感じられる。左右に分かれてこちらの首を狙ってきているのが分かるよ。だが今の俺は何故か精神が研ぎ澄まされているかのような感覚で一杯なんだ。
同時に二人が踏み込んできた……かのように見えて、コンマいくつかの差が出来ている。円を描くかのように、弧の一端で昌稀の山刀の先にほんの少しだけあてて角度を変えてやり、くるりと臧覇の剣先を叩いた。衝撃が手に伝わるや否や、昌稀の方に膝を落とし踏み込み体を寄せて右腕同士を密着させる。
「なっ!」
下から斜め上に突き上げるように体重の移動を行うと、弾かれてしまい昌稀が後ずさる。木の根に踵がぶつかり、尻もちをついてしまった。
臧覇が二歩を踏み込んできた。みぞおちを狙い突き出して来る剣にこちらから向かって行く。鞘のど真ん中と剣先をぶつけるようにして、無理矢理に前に出る。
「馬鹿な!」
お前くらいの正確な動きになると、身体の中心をきっちり狙うくらいわけないもんな! 左足を踏み込みで前に出しているのに、右腕が前に出せずに不自然な体勢になった。左肩を押してやり左足を踏んだ、すると見事に左腕を下にして転倒する。
剣を踏んで鞘を顔の前に突き付けてやる。
「どうだ、楽しめたか?」
山賊たちのどよめきがおこった。ついでに張遼と文聘の驚く顔も見れたぞ。荀彧は小さく何度も頷いている。
「参った、俺の負けだよ。あんた強いな!」
「そうか? 世の中には俺より強い奴なんて幾らでもいるだろうよ」
右手を差し出して引き起こしてやると、腰に剣を括りつける。昌稀は勝手に立ち上がったな。
「二人がかりで負けたこっちの気持ちも察しろよな」「連携の訓練をしていたら、俺が対抗出来たかは怪しいぞ? それよりも、山で暮らすのは認めて貰えるのか」
「はっはっは! 当然だ、あんたが勝ったんだから、あんたが頭目になりゃいいだろ」
ふーむ、そういうのはちょっとな。面倒ごとは避けたい。
「頭目は臧覇がやってればいいさ、俺はここで暮らせればそれでいいんだよ」
「そうか、わかった。いいか野郎ども、今からこの島介らは泰山の客人だ! 下手な真似しやがったら俺が許さんぞ!」
おお、勇ましいな。客人か、それがいいな。野次馬等はそんなことはしない、とばかりに両手を挙げて首を左右に思い切り振っている。
「臧覇、俺から一つ提案がある」
「ん、なんだ?」
真剣な表情になり、目を細めて皆の注目を集める。
「こういうときは酒盛りに限る、どうだ宴会でも」