「俺が認めるのは結果だ。楊射声校尉、お前がきっちりと功績を上げたらその言を認める。だが――」正面に向き直り「口だけだった場合は相応の措置をとる。解散しろ」
厳しい態度で諫めるも、士気を保つ為に結果が全てと断言する。戦争が終わった後に裁かれるのは俺の方かも知れんが、仲間を侮辱されて穏やかで居られるはずがない。
側近らを引き連れて北門から入って来る集団を見に行く、すると妙にカラフルな軍旗が目立った。奇妙な文様も多く、hong kong international school price 俄かにどこの勢力か解らなくなる。
やたらと大きい男が右手をふって小走りに近寄って来た。
「伯父貴ではないか、久しぶりだな、ははははは!」
「馬金大王か!」
相変わらずだな、それにしても体格が良い兵ばかり。南の方が体が成長しやすいんだろうか。南蛮から兵を率いてきているようで、他にもどこかで見たことがある王や洞主らが複数いた。
「親父殿の名代で南蛮軍十万を連れて来た、ここには一万しかいないが、一か月以内に残りが到着の予定だ」
一気に二倍の兵力に膨れ上がるのは嬉しいが、補給の苦労も即座に二倍だ。この分だと京に積んだのもすぐに溶けるな、まあいいさ。
「加勢に感謝する。春にはなったがまだお前らには寒いだろう、行軍がきつい奴らを一万選りすぐって、白鹿原の要塞に増援して欲しい。あそこなら屋根も壁もあり暖もとれる。魏の別動隊が来ていてな、陳将軍の兵だけでは少ない」
事務的にそう告げると、楊戯が嫌そうな顔をしてから下を向く。これは突っ込みを入れた方が良いかどうか……人となりを知っておくべきだな。
「楊射声校尉、何か言いたげだな」
半身だけ向けて名指しで声をかけた。李項は傍でピクリともしない、陸司馬もだ。緊張した空気が張り詰める。
「島大将軍のお傍におられる者の多くが農民出の下民と聞きました。もっとふさわしい側近をお選びになられてはいかがでしょうか」
ほう、なるほど、そういうことか。まあそういう奴だっているだろうさ、今まで出会わなかったのがむしろ不思議なくらいだ。
「俺だってどこで何をしていたか怪しいものだぞ。昔の記憶がないから自身でも解らんが」
そういう設定になっているんだよな、黙っていたら解らないし、子供の頃どうだったかは本当に知らんぞ。この身体も自分のものか、誰かの意識を乗っ取っているのかいまだに解明できていない。
「丞相のご友人とのこと、ご自身を卑下なさるのは丞相を貶めることにもなりかねません、ご自重を」
ここは仲良しクラブではないが、どうにもこいつは好きになれん。かといって戦争前に味方を切るのは得策とは言えんな。
◇
一か月で洛陽には兵が増えた、それも色とりどりの。中県から親衛隊の増員を率いてきたのは、退役したやつらだった。行軍のみを役目として、新兵らをはるばる前線まで引っ張って来たのだ。
閲兵時に目があった古参の親衛隊員に歩み寄ると「奕だったか、ここまでご苦労だった。郷に帰ったらゆっくりとしてくれ」名前を呼んで労う。すると涙を流して礼を言う。何千、何万と居る兵士の多くを覚えているわけではないが、共に生死をかけた側近兵くらいは解った。
彼らはそれが嬉しくて、誇らしくて感極まった。噂が噂を呼んで、親衛隊の間で俺への評価が高まったのを耳にする。そういうつもりで言ってるんじゃないが、黙って受け入れるべきなんだろうな。
立派な体躯をした馬に乗った部隊が入城して来る。朱色の旗を翻し、威厳に満ちた将校を先頭にだ。北営軍、首都の騎兵隊。それらが一斉に下馬すると片膝をつく。
「屯騎校尉冠軍将軍の王連であります。北営五校尉以下、騎兵四千、ただいま着陣したことを島大将軍にご報告申し上げます!」
即ち、向朗歩兵校尉、楊洪越騎校尉、寥立長水校尉、楊戯射声校尉と王連。将軍号を履いているのが彼だけなので、五人の中では一つ頭が出ている扱いになっている。楊戯は若く、恐らくは二十歳を少しでたくらい。
「数日で洛陽を出るまでは休養しておけ。詳細は李項に聞いておけ」