「西本願寺らしいです」
火鉢の火がパチパチと音を立てている。
ここのところ本当に冷え込んでいる。隊士たちも寒そうだ。
「西本願寺かぁ」
現代でもそこそこ有名である。
「暇だし見に行きませんか?」
美海がふと沖田の方を向いた。寝転がっている沖田と目が合う。
「いいですねぇ」
二人は立ち上がると部屋を出た。
ススススス…
足音を立てないように美海と沖田は足をズルズルと引きずる。
近藤の部屋の前に着くと美海と沖田は目を合わせて頷いた。
障子に耳をつける。
「西本願寺に屯所を移転なんて私は反対だ。ただでさえ京の民からは嫌われているのに西本願寺なんかに押し入ったら…」
「うーん…」
近藤は唸っているが、新撰組は人数が増えすぎたため広い場所へ移動したいのだ。
「それにあそこは長州との関わりが強い。止めるべきだ」
「だからこそだ」
「土方くんは何を言っているんだ!?」【低成本生髮?】 什麼是生髮精油?有用嗎?
「ここで俺らが長州を絶ち切ればいい」
「なんて無茶な!」
「無茶じゃない」
「しかもあそこは寺だぞ!?まさか神聖な境内で切腹などさせる気か!?」
「あぁ」
土方は境内がどうとか寺だからとか、はっきり言ってそんなことどうでもいい。
山南はあり得ないという顔で土方を見た。
「私は絶対に反対だ」
またもや近藤は出る幕がなく、オロオロと見守っている。
「今の屯所は狭すぎる。襲撃されたらどうする。ろくに身動きとれないぞ。移転はすべきだ」
「「近藤さん!」」
近藤は二人に鋭い眼差しで見られる。
正直最悪な立場だ。
「あー…えっとー…」
近藤は目を泳がす。
二人はその間もなお、ガン見だ。
「えっとー…」
「ハッキリしろ近藤さん」
少し苛立った土方が言う。元からなのだが目付きがかなり怖い。
「あー…屯所は移転したいかなぁ…」
チラリと二人を見ると沈黙している。
土方は当然だという顔をしており、山南はワナワナと震えている。
「な…なんちゃって…?」
その様子に見かねた近藤が二人を見ながら小さく言った。
うわっ…ここでそれ使うか?最悪や。
天井から様子を窺っていた山崎が呆れた顔をしている。
「あは…あははは…」
近藤は作り笑いしかできない。
近藤は土方に圧されたからではなく、近藤自身がもうこの屯所に限界を感じていたため出した結果である。
山南はかなり悔しそうだ。
まさかかつて仏の副長と呼ばれていた男と鬼の副長が対立してしまうとは誰も思っていなかっただろう。
美海と沖田は耳を離すとお互い顔を見合わせた。
「どう思います?」
美海は沖田に聞いた。
「山南さんの言ってることは正しいんですけど、土方さんの言ってることも正しいんですよねー」
どうして二人はこうもうまが合わないのだろう。
まぁそういう二人がいてこそ正しい的確な選択ができるのかもしれない。
「…戻りますか」
「はい」
二人は立ち上がり、その場を後にした。
その後もずっと山南は粘ったがもはや相手にされなかったと見ていい。
今、西本願寺には斉藤が交渉に行っている。
無論、人斬り集団など上げたくない西本願寺側は断固反対といった様子だ。これは長くかかりそうである。
「ねぇ、沖田さん」
「なんですか?」
「上って大変ですね」
「そうですね」
美海の言う上とは近藤、土方、山南である。幹部というと各隊の隊長も入るからだ。
「暇だし今から練習に付き合ってくださいよ」
沖田は目を見開いた。
「珍しいですねぇ。美海さんが私に稽古を頼むなんて」
「そんな気分なんですよ」
美海がふと外を見ると一雨降りそうな雲行きであった。
まるで今の山南の心情を表したようである。
「寒いなぁ」
沖田は呟いた。
「そういややけに人が少ないですねぇ」
いつもうるさい屯所は少しばかりシンとしている。
「なんか伊東先生の講義を受けにいってるらしいですよ」
「ふーん」
皆薄々勘づいているが、今や伊東の支持率は近藤を上回る勢いだ。
そりゃ弁が立ち、剣も出来たら人気にもなるはずだ。
近藤政権も危うい。
「大変だなぁ」